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ビジネス法務の最前線に立つ企業法務弁護士浅見隆行が、日々の企業活動に役立つ法律情報を提供・分析するブログ(blog)

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雑誌広告の出版社の責任

去年の11月30日に、名古屋地裁が大事な判例を出していたので紹介しようと思います。

事案の内容は、次の通りです。

医学博士のCは、主婦の友社が発行する雑誌「健康」平成13年9月号に、「【あまめしば】はどんな野菜か」という題の記事を掲載した。
この記事の中で、Cは、アダプトゲン製薬が製造し、ASTCが販売にかかる加工食品「Dのあまめしば」(本件あまめしば)を紹介した。その際、Cは、本件あまめしばの危険性を示さずに効用のみを紹介した。
これを読んだ複数の読者が本件あまめしばを購入・摂取したところ、閉塞性細気管支炎等の呼吸器機能障害を発症した。

そこで、この読者たちが、アダプトゲン製薬に対して製造物責任法(PL法)3条による損害賠償、ATSCに対してPL法3条・不法行為による損害賠償、主婦の友社と医学博士Cに対して不法行為による損害賠償を請求した


というケースです。

アダプトゲン製薬とASTCが、製造業者、販売業者としてPL法の製造物責任を負うというのは原則通りなので、特に注目する点はありません。

この判例で注目すべき点は、雑誌記事を掲載した主婦の友社の責任の有無と、記事を著した医学博士Cの責任の有無についての判断です。

まず、【主婦の友社の責任】について。

判決は、主婦の友社による記事の掲載については、本件記事が「本件あまめしばにより健康になることはあっても病気になることはないと原告(読者)らに誤信させるに足りる記事であ」ることは認め「健康増進法上・・・・本件記事は実質的には本件あまめしばの広告にあたり、原告らへの本件あまめしばの販売を促進し、原告(読者)らに本件あまめしば摂取による閉塞性細気管支炎を発症させた」として、違法行為であることは認めています。

しかし、その一方で、「出版社である主婦の友社において、加工あまめしば摂取による重篤な肺疾患発症の予見可能性はなかった」として、「主婦の友社が本件記事により本件あまめしばの販売を促進し、原告(読者)らに本件あまめしば摂取による閉塞性細気管支炎を発症させたことにつき過失はないとして、法的責任は否定しました。

この部分から何が言えるかというと、雑誌記事を掲載する時点で、出版社が記事の内容による違法性の内容について認識していた場合には、出版社に法的責任が発生することを裁判所が認めたということです。

ただ、このケースは、出版社だけで参考になるわけではありません。
この判例からは、通常の企業広告においても、効用などを内容とする広告の場合には、その効用の根拠や、副作用の有無について確認し、副作用などが確認できる場合には、きちんとその内容も広告に表示しなければならない、ということを学ぶことができます。

次いで、記事を著した【医学博士の責任】について。

判例は、医学博士の執筆部分については、主婦の友社の場合と同様に、本件記事が「本件あまめしばにより健康になることはあっても病気になることはないと原告(読者)らに誤信させ、原告らへの本件あまめしばの販売を促進し、原告(読者)らに本件あまめしば摂取による閉塞性細気管支炎を発症させた」として、違法行為であることは認めました。

そのうえで、Cが医学博士であることに着目し、「医師等は、食品の効用を解説する場合には、食品が生命・健康を害する危険性の有無についても、その時点の最高の知識と技術をもって確認し、危険性が存する場合にはこれを指摘し、消費者に警告するなど適宜な措置を講ずべき義務が課されている」との注意義務があることを認め、かつ、Cが医学博士の肩書きで、専門家の立場から野菜あまめしば・加工あまめしばの効用を解説していたことから、「野菜あまめしば・加工あまめしばの摂取により閉塞性細気管支炎が発症する危険性を十分に予見することができた」「その危険を予見できた以上・・・記事を執筆するにあたり、その危険性を警告することが可能であり、原告らの閉塞性細気管支炎の罹患を避けることができた」として、予見可能性結果回避可能性があったことを認めています。

こうした前提のもと、判例は、Cが「野菜あまめしば・加工あまめしばの摂取と閉塞性細気管支炎との関連性につき有効な調査をせず、警告をしなかったことからすると、予見義務・結果回避義務を尽くしていなかった」として、注意義務違反を認めました。

この部分から何が学べるかというと、「医学博士」という専門家としての肩書きを有する場合には、記事を著すにあたっては、医師が手術する場合と同じような「その時点の最高の知識と技術」にもとづく注意義務が要求されるということと、予見可能性や結果回避可能性は厳しく要求されるということです。

この部分は、企業にとっても同様であると考えられます。
たとえば、自社製品についての記事や広告を掲載しなければならないときには、その会社が老舗で専門家であればあるほど、また専門的な研究所など組織がしっかりしていればいるほど、高度な注意義務と、それに相応した予見可能性や結果回避可能性が要求されるということです。

企業による広告には、景表法の不実証広告の規制もありますが、それと同じように、内容の危険性についての注意義務が課されていることも理解していただきたいと思います。

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