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ビジネス法務の最前線に立つ企業法務弁護士浅見隆行が、日々の企業活動に役立つ法律情報を提供・分析するブログ(blog)

金融庁、行政処分事例集発表

3月28日に、金融庁が、新たな「行政処分事例集」を発表しました。
行政処分事例集はこちら(Excelファイルです)

これは、平成14年4月から平成19年12月末までに、金融庁が金融機関に対して行った行政処分を一覧にしたものです。

金融機関以外には役に立たないかもしれませんが、ご参考までに。

金融機関は、これを参考にして、どういった場合には行政処分されるおそれがあるということを理解し、この事例集に類似したトラブルが社内に発生した場合には、金融庁から行政処分をされないように対処することが必要になってきます。

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リコール社告のJIS化

はい。また、すっかりご無沙汰しておりました。

さて、ちょっと古いニュースネタですが、今日は、「消費生活用製品のリコール社告のJIS制定」について。

製品事故が発生した場合や発生しそうな場合、一般的に、メーカーはリコールをします。
このリコールをする場合、メーカーが消費者にリコール情報を提供するもっともポピュラーな方法は「リコール社告」です。新聞の社会面の下の方にあるあれです。

このリコール社告の方法について、経産省の中にある日本工業標準調査会が、標準書式・作成マニュアルを作ろうというのが、今回の「リコール社告のJIS制定」という動きです。

今のところ、日本工業標準調査会から発表されているJISの内容は、こちら(pdfファイルです)。

内容をピックアップすると、社告の記載項目として要求されているのは、以下の10項目。

a)タイトル
b) 危険性,事故の状況及びその原因
c) 消費者が取るべき対応策
d) 回収,部品交換,点検など,消費者への要請
e) 製品の特定方法
f) 連絡先の住所,電話番号・ファクシミリ番号(例えば,フリーダイヤル)など
g) 社告の回数及びこれまでの回収率
h) 日付
i) ホームページアドレス
j) その他必要な事項


上記のpdfファイルでは、この10項目以外に、書式例や記載方法の注意点まで書かれています。

正直、内容には目新しいことはありません。
今まで、私がセミナーなどにおいて、「消費者に周知すべき方法・内容」として説明してきた項目とほぼ同じです。

そういう観点から言えば、何で今さら、こんな書式の標準化をしなければならないんだろう、というのが感想です。率直に言えば、企業に対して官庁が規制しすぎ(企業は子供かよ)、と呆れました。

ただ、書式の標準化をしたとしても、一番重要なのは、消費者にわかりやすい、内容が伝わりやすい社告であるかどうかという点です。

こうした書式の標準化をすると、企業は「他の会社はそんなことやっていない」「JISではそんなこと要求されていない」などを理由にして、社告内容に工夫をしなくなるおそれがあります。

しかし、個人的には、標準書式にとらわれず、企業が積極的な工夫を今後も続けて欲しいと願っています。

たとえば、型式番号が書かれている場所や故障箇所をデザイン図で示したり、消費者が当面取るべき行動、もし事故が発生したらどんな被害を受けるのか、といったことを説明したりという点に、各企業ならではの工夫のしどころはあると思います。

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雑誌広告の出版社の責任

去年の11月30日に、名古屋地裁が大事な判例を出していたので紹介しようと思います。

事案の内容は、次の通りです。

医学博士のCは、主婦の友社が発行する雑誌「健康」平成13年9月号に、「【あまめしば】はどんな野菜か」という題の記事を掲載した。
この記事の中で、Cは、アダプトゲン製薬が製造し、ASTCが販売にかかる加工食品「Dのあまめしば」(本件あまめしば)を紹介した。その際、Cは、本件あまめしばの危険性を示さずに効用のみを紹介した。
これを読んだ複数の読者が本件あまめしばを購入・摂取したところ、閉塞性細気管支炎等の呼吸器機能障害を発症した。

そこで、この読者たちが、アダプトゲン製薬に対して製造物責任法(PL法)3条による損害賠償、ATSCに対してPL法3条・不法行為による損害賠償、主婦の友社と医学博士Cに対して不法行為による損害賠償を請求した


というケースです。

アダプトゲン製薬とASTCが、製造業者、販売業者としてPL法の製造物責任を負うというのは原則通りなので、特に注目する点はありません。

この判例で注目すべき点は、雑誌記事を掲載した主婦の友社の責任の有無と、記事を著した医学博士Cの責任の有無についての判断です。

まず、【主婦の友社の責任】について。

判決は、主婦の友社による記事の掲載については、本件記事が「本件あまめしばにより健康になることはあっても病気になることはないと原告(読者)らに誤信させるに足りる記事であ」ることは認め「健康増進法上・・・・本件記事は実質的には本件あまめしばの広告にあたり、原告らへの本件あまめしばの販売を促進し、原告(読者)らに本件あまめしば摂取による閉塞性細気管支炎を発症させた」として、違法行為であることは認めています。

しかし、その一方で、「出版社である主婦の友社において、加工あまめしば摂取による重篤な肺疾患発症の予見可能性はなかった」として、「主婦の友社が本件記事により本件あまめしばの販売を促進し、原告(読者)らに本件あまめしば摂取による閉塞性細気管支炎を発症させたことにつき過失はないとして、法的責任は否定しました。

この部分から何が言えるかというと、雑誌記事を掲載する時点で、出版社が記事の内容による違法性の内容について認識していた場合には、出版社に法的責任が発生することを裁判所が認めたということです。

ただ、このケースは、出版社だけで参考になるわけではありません。
この判例からは、通常の企業広告においても、効用などを内容とする広告の場合には、その効用の根拠や、副作用の有無について確認し、副作用などが確認できる場合には、きちんとその内容も広告に表示しなければならない、ということを学ぶことができます。

次いで、記事を著した【医学博士の責任】について。

判例は、医学博士の執筆部分については、主婦の友社の場合と同様に、本件記事が「本件あまめしばにより健康になることはあっても病気になることはないと原告(読者)らに誤信させ、原告らへの本件あまめしばの販売を促進し、原告(読者)らに本件あまめしば摂取による閉塞性細気管支炎を発症させた」として、違法行為であることは認めました。

そのうえで、Cが医学博士であることに着目し、「医師等は、食品の効用を解説する場合には、食品が生命・健康を害する危険性の有無についても、その時点の最高の知識と技術をもって確認し、危険性が存する場合にはこれを指摘し、消費者に警告するなど適宜な措置を講ずべき義務が課されている」との注意義務があることを認め、かつ、Cが医学博士の肩書きで、専門家の立場から野菜あまめしば・加工あまめしばの効用を解説していたことから、「野菜あまめしば・加工あまめしばの摂取により閉塞性細気管支炎が発症する危険性を十分に予見することができた」「その危険を予見できた以上・・・記事を執筆するにあたり、その危険性を警告することが可能であり、原告らの閉塞性細気管支炎の罹患を避けることができた」として、予見可能性結果回避可能性があったことを認めています。

こうした前提のもと、判例は、Cが「野菜あまめしば・加工あまめしばの摂取と閉塞性細気管支炎との関連性につき有効な調査をせず、警告をしなかったことからすると、予見義務・結果回避義務を尽くしていなかった」として、注意義務違反を認めました。

この部分から何が学べるかというと、「医学博士」という専門家としての肩書きを有する場合には、記事を著すにあたっては、医師が手術する場合と同じような「その時点の最高の知識と技術」にもとづく注意義務が要求されるということと、予見可能性や結果回避可能性は厳しく要求されるということです。

この部分は、企業にとっても同様であると考えられます。
たとえば、自社製品についての記事や広告を掲載しなければならないときには、その会社が老舗で専門家であればあるほど、また専門的な研究所など組織がしっかりしていればいるほど、高度な注意義務と、それに相応した予見可能性や結果回避可能性が要求されるということです。

企業による広告には、景表法の不実証広告の規制もありますが、それと同じように、内容の危険性についての注意義務が課されていることも理解していただきたいと思います。

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スルガコーポレーションと非弁行為

4日に、スルガコーポレーションが業務を委託していた光誉(こうよ)実業の社長らが、弁護士資格がないのにビルのテナントと立ち退き交渉を行ったとして、非弁行為を理由に逮捕されました。

事件の内容は報道されているところなどを元にまとめると・・・

スルガコーポレーションは、その所有するビルのテナントとの立ち退き交渉をするにあたって、形式的に、スルガコーポレーションが委託先の光誉実業にビルを売却して所有権を移転させ、光誉実業を所有者とするという外観を作り、光誉実業に所有者としての立場でテナントとの立ち退き交渉を行わせ、光誉実業が立ち退きを成功させた場合には、スルガコーポレーションから報酬を支払っていた、とのこと。

非弁行為は、弁護士法72条で禁止されています。
非弁行為というのは、弁護士ではない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件その他一般の法律事件に関して、法律事務を行うことです。

今回の事件では、弁護士ではない光誉実業が、スルガコーポレーションから報酬を得る目的で、立ち退き交渉という所有権に基づく建物明渡請求という法律事件を行ったことが、この非弁行為に該当します。

さて、この非弁行為ですが、最近は、弁護士との業種が隣接している司法書士や行政書士が非弁行為まがいのことをやっていることが目立つように感じます。

電車やネットで、司法書士や行政書士が「相続のご依頼はこちらへ」とか「債務整理はこちらまで」とか、そういう広告を出しているのを見たことはありませんか?
そのことです。

司法書士や行政書士の仕事は、司法書士法、行政書士法で厳しく制限されています。

司法書士法では、司法書士の仕事は、登記手続の代理、法務局に提出書類の作成・書類提出手続きの代理、裁判所に提出する書類の作成・相談、簡易裁判所における140万円以下の代理に限定されています。

行政書士法では、行政書士の仕事は、官公署に提出する書類の作成、権利義務・事実証明に関する書類の作成、官公署への書類提出の代理、契約その他の書類の代理人としての作成・相談に限定されています。

これらの規制から何が言えるかというと、

司法書士や行政書士は、相続に関しては、遺産分割した登記手続の書類作成や、戸籍についての手続きの代理はできるけど、個々の相続人の代理として何か手続きを行うことはできない(できるのは司法書士が140万円の範囲内だけ)、ということです。

また、債務整理に関しても、相談に乗ったり、裁判所に提出する破産や民事再生の書類の作成は行っても、破産や民事再生の申立、その後の面接、破産管財や財産管理には手を出せない、ということですし、債権者に対して内容証明を出すことはできるが、債権者が何か言ってきたときには代理人として防波堤になって守ることはできない(できるのは司法書士が140万円の範囲内だけ)、ということです。

「弁護士はお金がかかりそうだから、司法書士や行政書士に相談してみよう」と相談するのはいいですが、司法書士や行政書士では相談と書類作成の代行しかしてもらえないということを良く理解してください。

ま、私の場合、相続も債務整理もやらないので、特に仕事の領域がバッティングするとかないので、いいんですけどね(140万円以下の案件で、相手が司法書士だったというくらい)。

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マクドの店長に対する残業代・休日割増賃金

1月28日に、マクドの店長は労基法上の「管理監督者」に該当しないことを理由として、マクドには、店長に対する時間外・休日割増賃金を支払義務があることを認める判決が言い渡されました。

判決のポイントは、次の点です。

「労基法が規定する労働時間等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合に同法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則である。
管理監督者については、労基法の労働時間等に関する規定は適用されないが、これは、管理監督者は、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、労基法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ない者と言えるような重要な職務と権限を付与され、また、賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置がとられているので、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、上記の基本原則に反するような事態が避けられ、当該労働者の保護にかけるところがないという趣旨によるものである。
管理監督者にあたると言えるためには、実質的に以上の法の趣旨を充足するような立場にあると認められなければならない」



この判決が、管理監督者に該当するかどうかの判断要素として示しているのは、
(1)経営者と一体的立場といえる重要な職務・権限を有していること
(2)賃金等の待遇や、勤務態様が、他の一般労働者に比べて優遇されていること

の2点です。

これらの要点を示した上で、判決は、店長の権限等、勤務態様、処遇について各々判断しています。

まず、店長の権限等については、将来店長等に昇格していく社員を採用する権限がないこと、労務管理についても一次評価者にすぎないこと、会社が決めた営業方針や営業戦略に即した店舗運営を遂行しなければならない立場であることから、その職務、権限は店舗内の事項に限られて、経営者と一体的立場とはいえない、と認定しています。

次いで、勤務態様については、実質的には労働時間に関する自由裁量がないこと、店舗責任者として店舗従業員の労務管理や店舗運営を行うにすぎず労基法の労働時間等の規制になじまない内容や性質ではないことを認めています。

さらに、処遇については、店長の労働時間と年収は労基法の労働時間等の規制を排除する待遇としては十分ではないこと、インセンティブは店長以外の従業員にも支給されているので管理監督者として扱うことの代替措置として重視できないことを認めています。

判決は、こうした各点を根拠に、マクドの店長は管理監督者にはあたらないと判断しています。

この判決によれば、店長に限らず、通常の事業会社の「管理職」と呼ばれる人であっても、重要な権限や職務を有していない場合や、労働時間や業務内容などの勤務態様や、勤務時間や年収などの処遇が平社員とあまり差がないという場合には、労基法の「管理監督者」にあたらないと判断される可能性が十分にあります。

たとえば、「課長」に昇格したけれど、権限は係長や平社員とあまり変わらないし、働いている内容や勤務時間も変わらない。まして、給与についてもほとんど差がない。という場合には、「管理監督者」ではなく、労働者として、会社に対して時間外・休日の割増賃金を請求できる可能性があるということです。

会社の側から言えば、そのように名ばかりの管理職に対して本来なら割増賃金を支払わなければならないというケースもある、ということです。

人事管理の問題として、企業は、「管理職」と言われる人たちの職務や権限、勤務態様や処遇について見直さなければならないといえます。

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ダスキン株主代表訴訟確定

ミスタードーナツが違法添加物を混入した大肉まんを販売していたことに関し、ダスキンの元社長や元専務らに対する株主代表訴訟が提起されていた件についての最高裁判決が出ました。

最高裁の判決は大阪高裁の判決内容を指示するものだったので、最高裁判決自体には目新しい内容はないようです。
しかし、この一連の判決は、企業不祥事発生時に取締役が最低限何を行わなければならないかという善管注意義務の内容を具体的に示したもので、非常に重要な判決で、その内容を理解しておく必要があります。
そこで、今一度、大阪高裁が判決の中で何を述べていたのかを振り返りたいと思います。

この判決で元社長らの責任を認めた根拠は、「社長らが無認可添加物であるTBHQが大肉まんに混入され販売されていた事実を知った後に、速やかにダスキンの損害・信用失墜を最小限度にとどめるための適切な対応を講じなかった点に、取締役の善管注意義務がある」という点です。

判決の中では、より詳しく書かれています。

まず、元専務の善管注意義務違反については、次のとおり。

「「大肉まん」はミスタードーナツでは元来は蒸した状態で販売される商品であり,販売後長期間消費者の手元で保管される可能性は少ないと考えられる。そして,Kによると,本件販売継続により平成12年12月20日ころまでにはTBHQが混入した「大肉まん」の販売は完了していたというのであるから,その限りでは,一審被告Y2が本件混入や本件販売継続の事実を知った同月29日の時点では,もはやその回収の可能性は少なかったとも考えられる。
 しかし,一審被告Y2は,その時点で,実際にTBHQ混入の「大肉まん」がいつ販売され在庫が残っていないかどうかなどを正確に調査した上で販売中止や回収等の対応策の要否を検討した訳ではない。Kらは混入を知った後にも販売店の混乱等を回避するため違法に販売を継続させていたというもので,事柄の重大性の認識に全く欠けていることが明らかなのであるから,ダスキンとしてはその報告だけで販売中止の必要性や回収の可能性がないなどと速断することは許されない。また,仮に同月20日ころまでにTBHQ混入「大肉まん」の販売が完了していたとしても,回収の可能性が全くなかったとまではいえない
 そうすると,一審被告Y2が本件混入や本件販売継続の事実を知りながら,事実関係をさらに確認すると共に,これを直ちに社長である一審被告Y1に報告し,事実調査の上で販売中止等の措置や消費者に公表するなどして回収の手だてを尽くすことの要否などを検討しなかったことについて,取締役としての善管注意義務の懈怠があったことは明らかである」


続いて、元社長の善管注意義務違反については、次のとおり(ちょっと長い引用ですが)。

「一審被告Y1が本件混入及び販売継続及びNへの業務委託契約等を知ったのは平成13年2月8日(同人によると2月22日)であり,その時点では既にTBHQ混入「大肉まん」の販売中止や回収は現実的には問題にはならなかったといえる。しかし,一審被告Y1は食品販売事業をその事業の一環とするダスキンの代表取締役社長である。前年末に本件混入や,混入を知りながらあえてその販売を継続するという食品販売事業者としては極めて重大な法令違反行為が行われていた事実が判明した以上は,その実態と全貌を調査して原因を究明し再発防止のために必要な措置を講ずることはもとより,直ちに,担当者によって取られた対応策の内容を再点検して,食品衛生法違反の重大な違法行為により食品販売事業者が受けるおそれのある致命的な信用失墜と損失を回避するための措置を講じなければならない。その中で,マスコミ等への公表や,監督官庁への事後的な届出の要否等も当然検討されるべきである。」
「仮に平成13年2月の段階で,一審被告Y1が,未承認添加物であるTBHQ混入を知りながら「大肉まん」の販売を継続したということの持つ対消費者との関係における重大性を看過せずに,ダスキンのコンプライアンス部門をして事実関係を徹底的に調査し,早期に適切な対応を取っていたとしたら,その後,ダスキンが消費者やフランチャイジーからの信頼を決定的に失うという最悪の事態は,相当程度回避できたものと考えられる。そのような措置を怠り,SやKが取った措置を,その違法性を知りながら了承し,隠ぺいを事実上黙認したこと,及び,公表の要否等を含め損害回避に向けた対応策を積極的に検討することを怠ったことにおいて,一審被告Y1の代表取締役社長としての善管注意義務の違反は明らかである。
 以上に対し,一審被告Y1は,当時同人が知らされたのはTBHQ混入のうわさがあるということだけで,TBHQが検出されなかった旨の公的機関の証明書や業務委託契約書及びその稟議書などを示され,今後は心配ない旨の説明を信じたもので善管注意義務違反はないと主張する。しかし,一審被告Y1が本件混入及び販売継続の事実を認識したと認められることは先に認定したとおりである。3人で墓場まで持っていこうと積極的に隠ぺい工作を指示したとまでは認められないにしても,TBHQ混入を知りながら販売を継続した当の責任者であるS及びKの責任を問うこともなく,その措置を了承し,事実調査を避けたものであり,それが客観的には隠ぺいを事実上黙認したことに当たると評価されるのは,やむを得ないところである。そして,この時点で,公表の要否等を含め企業としての損害回避ないし軽減に向けた事後措置を積極的に検討しておく必要があったことも明らかであるから,一審被告Y1の上記主張は採用できない。」


なお、下線は私が任意に引いた箇所です。判例に下線部があるわけではありません。


上記2名の判決の中で重要なポイントは、以下の3点です。

まず、1点目は、取締役は、無認可添加物が混入され販売されているという不祥事の発生を知った場合には、実態を調査して事実の重大性(or重大ではないこと)を認識しない限りは、販売中止の必要性がないとか、回収の可能性がないという消極的な判断を即断してはならない、という点です。

次いで、2点目は、取締役は、社長への報告義務があるということと、事実を調査したうえで、販売中止の必要性や公表などの方法による回収の必要性を検討しなければならない、という点です。

この2点からは、取締役は不祥事の発生を知った場合には、事実調査をするまでは販売中止や回収の必要があると考えていなければならず、販売中止や回収が必要がないということは調査した事実をもとに判断しなければならない、ということが導けます。

これは、従前からの「経営判断の原則」の延長にある結論であると理解できます。
「経営判断の原則」では、(1)前提事実を不注意なく認識しなければならない、(2)認識した事実に基づく経営判断は合理的でなければならない、とされていました。
この(1)(2)とまったく同じです。

さらに、3点目は、代表取締役社長は、極めて重大な違法行為を認識したときには、事実調査のほか、原因究明、再発防止策を講じることはもちろん、担当者がとった対策の内容を再点検して、信用失墜・損失回避のための措置を講じなければならない、という点です。

ここからは、代表取締役社長の場合には、専務取締役などよりも善管注意義務の内容が加重されていると理解することができます。
具体的には、発生している不祥事が重大な法令違反行為の場合には、担当者がとった対応策の内容が法令違反を解消しているか(隠蔽するものではないかなど)を再点検しなければならない点や、積極的に信用失墜・損失回避のための方策を講じなければならないという点です。

ここは、従前の「信頼の権利」の内容をより一歩踏み込んだものと理解することができます。
「信頼の権利」では、「取締役は、特段の事情がない限り、各部署において期待された水準の情報収集、分析、検討が誠実になされたとの前提に立って自らの意思決定をなすことが許される」と考えられています。

しかし、この判決は、担当者が具体的な対応策をとったとしても、それが重大な違法行為を前提としている場合には、信頼の権利でいうところの「特段の事情」に該当するので、取締役は、担当者を信頼してはならず、再点検しなければならないとした、と理解することができます。

以上から、企業不祥事が発生した場合にも、取締役は、経営判断の原則や信頼の権利に照らして、善管注意義務を尽くして対応しなければならない、ということが理解できます。

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テラメント株式会社の大量保有報告虚偽事件

川崎市にあるテラメント株式会社が、1月25日に、アステラス製薬、ソニー、三菱重工業、トヨタ自動車、フジテレビジョン、日本電信電話の6社の株式を大量に取得して、中には、51%以上の株式を取得したことを内容とする虚偽の大量保有報告書を関東財務局に提出した、という事件がありました。
関東財務局のリリースはこちら

これに対して、関東財務局は事実関係を調査して、1月27日に、テラメント株式会社に対して、訂正報告を行うよう命じました。

こんな事件がもし自分たちの会社で起きてしまったら、どうするべきかを考えたいと思います。
今回は結果的に虚偽であったということが判明しましたが、もし仮に、買収だったとしたら・・。

このようなケースの場合、まず、企業は、現在自社の株式を保有してくれている株主、さらには市場の投資家に対して、メッセージを送るべきだと思います。

それが虚偽であろうとなかろうとです。
「虚偽かもしれない」と思って、しばらく静観した後、「結果として虚偽で問題ありませんでした」というのは結果オーライなだけで、会社のリスクマネジメント体制のありかたとしては問題です。大失敗です。

企業としては、虚偽ではないことを前提に買収かもしれないと思って動かなければなりません。

ただちに買収防衛策の発動までする必要はありませんが、買収合戦に至ってしまったときのことを考えて、既存の株主からの支持を取り付ける意味でも、今後の経営理念や経営方針についてのメッセージを出したり、もしくは買収報道に対して既存株主が抱く不安感を払拭するようなメッセージを出すべきです。

なお、今回は6社とも何もメッセージを出していませんでした。

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